2009年12月27日

電気自動車の未来

オバマ大統領の掲げた「グリーン・ニューディール」というビジョンの最大の目玉は『スマートグリッド』だと言われている。スマートグリッド(次世代送電網)とは、ITと超電導送電技術を利用した効率の良い(スマートな)送電網のことで、電力の流れを供給側・需要側の両方から制御し、最適化できるという革新的な仕組みである。よく言われているように、次世代エネルギーで主役となるのは「電気」であり、とくに効率性と環境負荷の少なさ、実現性などを考えると原子力発電は圧倒的に優位とされている。よって、スマートグリッドで送電する電力の比重を原子力発電に移行していくことも当然の流れで、いま、原子力発電という分野は世界中の投資家からも大きな注目を集めているのだ。
ところで、スマートグリッド化を進めることによるメリットのなかで「エコカーのインフラ整備」というものを挙げられるが、これには、既存の自動車業界のビジネスモデルを破壊しかねない強力なインパクトがある。
 
ガソリン自動車が世界の主流になったのは、20世紀、アメリカにおいてタダ同然の安価な原油が大量に調達できたからという経済的背景があった。だがオイルショック以降、各国は石油資源の浪費を抑制して省エネ型の経済社会へと転換していく必要に迫られる。しかし、アメリカは依然として膨大な石油エネルギーの浪費型経済に停滞しており、だからこそ彼らはクウェートの石油を必要としたのである。
―そして今、この流れが断ち切られようとしている。電気自動車だ。今の主流はプリウスなどに代表されるハイブリッドカーだが、結局のところ、それはガソリン自動車から電気自動車への「中継」でしかない。
あるいは、そこには次世代カーの本命と言われていた「水素カー」の存在があった。しかし、これらの展望はGMやクライスラーの破綻によって崩れ去り、世界の自動車トレンドは、これから電気自動車へとシフトするのである。
 
電気自動車にはガソリン自動車にはない優れた性質がある。ある意味で、それは「電池」と「モーター」と「制御システム」の3点があれば稼働してしまう家電製品みたいなものなのだ。テレビや冷蔵庫のように誰が組み立てても、目立った性能の差は出てこなくなり、日本の自動車メーカーの得意とした「すり合わせ技術」の価値がなくなってしまう。車体が軽くなるうえに故障も少なくなる。なにより、開発に莫大な費用と時間がかかった「エンジン」も不要になってしまう。ガソリン自動車においては、エンジンとその制御装置の技術は「ブラックボックス」であり、メーカー以外はその内部を知ることが出来ない…、 ―それがメーカーの「強み」であったはずなのに、電気自動車の時代においてはもう「強み」でなくなってしまう。これはトヨタなどの既存メーカーにしたら一大事である。
 
そんなわけで、今のところトヨタの未来は暗い。リーマンショック以降、トヨタの業績が悪化したのは利益の大半を稼いでいたアメリカ市場が低迷したことにある。そして、ここにきて自動車ビジネスそのものの歴史的大転換という大きな試練にさらされているのである。
世の中に電気自動車というものが存在せず、ガソリン自動車だけであったなら、中国などの国々がトヨタ・日産などの日本車メーカーに追いつくことは永遠に不可能だったかもしれない。しかし、不幸にも(?)これからの主流は電気自動車なのだ。トヨタが誇るハイブリッドカー「プリウス」も、結局のところはガソリン自動車であり、電気自動車にはなりえない。電気自動車の心臓部とも言える「電池」について、トヨタがどこまで喰らいついていけるかがカギである。残念ながら「電池」の技術についてはトヨタも日産もお手上げなのだけれど。
なにはともあれ、未来の電気自動車は、パソコンのように安く大量生産することが可能になるので、日本車メーカーの優位性は低下していかざるを得ないようだ。日本車メーカーが、いまの規模を維持しながら事業をシフトさせていくにはどうすればいいのか。かつてない難題となった。
 
 
posted by もときち at 21:48 | ECONOMY | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする 
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