2009年07月22日

トレーダーの条件

かつて、FX(外国為替証拠金取引)が高い注目を集めていた時期がありました。具体的にいうと、2005年からサブプライム問題が浮上する2007年あたりまでの、いわゆる円安トレンドだった円相場の時期です。この時期は「米ドル/円」でさえあれば、どんな素人でも利益が出る状況で、カリスマトレーダーとか何億円も稼ぐ主婦とか、そのような投資家ではない一般人までもがもてはやされ、FXは金融市場の一世を風靡しました。しかし、同時にそれは不幸な時代の始まりでもありました。彼らはたまたまFXで勝ち続けた結果、それを己の実力であると錯覚して、2008年には多くの損失を被ることになったからです。
 
先日、僕の知人が「自分にFXを教えてほしい」と依頼してきました。なぜこんな時期に…とも思ったのですが、どうやら彼はFXを 「楽して儲かる」 ものと勘違いしていたようなのです。なるほど、FXには数多くの幻想がつきまとっています。少ない元手で簡単に大金が手に入る、株などを知らない素人でも出来る、何より仕事を辞めて自由な時間が手に入る…。まあ、まったくの的外れではないのですが、FXでそれなりに高いパフォーマンスを確保して、ましてや生活していけるだけの安定的な収入を得ていくには、市販の「FX入門書」を読んで、なんとなく始める程度では、まず不可能といってよいでしょう。
 
それでは、なぜ当時(2005〜)は、ずぶの素人がああも簡単に勝ち続けることが出来たのでしょうか。そもそも、FXは元手の資金をそれほど必要としません。FXには「レバレッジ」といい、元手10万円を証拠金として預けることで、その100倍=1000万円規模の取引が可能なルールがあるわけです。そして、そこに「スワップポイント」が加わります。
スワップポイントとは、取引を行った際の2通貨の金利差のことで、たとえば金利0%の通貨と金利10%の通貨で取引を行った場合、その差10%分もの差額分だけ自らの収入となり、毎日スワップポイント分の受け取りが発生します。
しかし、これらは2国の通貨に金利差があって初めて実現するものです。2008年9月のリーマンショック以降、アメリカを始め各国がこぞって自国の政策金利を下げてきたことは我々の記憶に新しいでしょう。日本円の金利0%、米ドルの金利0%…このような状況下では、スワップによる恩恵は望むべくもない。2008年末は、多くのFXトレーダーが悲鳴をあげました。(僕の従兄弟から聞いた話ですが、彼の友人もFXで一夜にして500万円の損失を被ったといいます)
 
ともあれ、FX専業のトレーダーとして生活していくことは非常に難しい。だって、本当に誰でも簡単に大金が手に入るのなら、金融のプロといわれている証券会社の社員たちが、片っ端から会社を辞めて独立しているはずでしょう。にもかかわらず、証券会社で年収1000万とか稼いでいる人たちが辞職しないのには理由があります。つまり、FXは金融のプロだからといって必ずしも勝てる類の商品ではないということ。
まあ、証券会社の兄ちゃん達は、いまだにデリバティブを開発して高利回りの危険極まりない金融商品を「必ず儲かりますよ」といった甘い言葉で、そこらへんの素人資産家に売っています。誰もそれを詐欺とは咎めません。銀行にしろ証券会社にしろ、金融機関というのは「お客様の利益になる金融商品」を売るような輩では決してなく、「我が社の利益になる金融商品」をお客様に売りつける、正統派セールス軍団なわけですね。話がそれましたが、FXは金融の知識があるとか、高学歴だからとか、その程度のバックグラウンドだけで儲かるようなものではありません。
 
ある経済学者が自著のなかで「男にとって妻子とは不良債権である」という、けしからん記述をしていましたが、トレードで勝っていくためには、そのくらいの“リアリズム”が、あるいは必要なのかもしれませんね。
妻子、マイホーム、あるいは経営している会社と、そこで雇っている従業員たちの人生。たった1人でそこまで多くのものを背負っている人生は相当なプレッシャーでしょう。一方で「失うものがない」というポジションにいるだけで、トレーダーはメンタルにおいても圧倒的に有利です。
 
 
posted by もときち at 16:37 | ECONOMY | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする 
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